関東地区院生研究会・シンポジウム 「トランスナショナル空間の統治」のお知らせ

シンポジウム 「トランスナショナル空間の統治」ポスター

【日時】 2011年2月5日(土)13:00-18:35(開場12:30)
【場所】 専修大学(神田キャンパス) 7号館 3階 731教室
【開催】 日本国際政治学会・関東地区院生研究会
      専修大学法学研究所
       国際関係思想・研究ネットワーク

【シンポテーマ:トランスナショナル空間の統治】

 近年、グローバル化の進展とともに人々の生活は、一方で、便利さを増し自由が広がる面がありながらも、他方で、管理が強化されていくという真逆の現象が併存するような状況になっている。というのも、資本主義の流れをうまく利用しなければならないという要請に国家が向き合わなければならない一方で、国家は安定的な秩序を実現するということも人民から要求されるからである。その結果、リスク管理という概念の導入によって様々な不安要素が安全保障の問題として捉え直されるようになっている。
 こうした状況は、領土と統治のスケールの不一致という「空間編成」についての再考を促す。それは、世界の一部の地域では安定的な人々の生活が提供されるところもあれば、そうした場所には包摂されずにこぼれ落ちる人々もいれば、完全な包摂ではなく排除されながら包摂される人々も存在するということを意味する。
 不安定な地域と安定的な地域というだけでなく、不安定な存在と安定的な存在が世界には偏在している。安定/不安定のラベリングが偶然貼られることとなる国々の評価は、あたかも危険と安全のグラデーションの色分けを施されて、各々の国に属する人々もそれに対応する属性へと変換されて、人々の理解の中に浸透していく。他方で、先進国内部に位置する人々はといえば、人種・階級・宗教・世代・性別といった複数のアイデンティティを経由しながら分断されながら統治されている。こうした重層的な分断線は、われわれが人間である以前に市民として主体化されることを強いられることから生じる複数の緊張関係に起因するのかもしれない。
 いずれにせよ、上記のようなプロセスからすれば、紛争と平和構築・人間の安全保障・人間開発・ディアスポラ・移民や難民の安全保障問題化といったアジェンダが、「人間の生死の管理」という一点で連結してくる。
  統治という視点を導入することで、一見別個に見える諸問題が融合していく現実をわれわれは目の当たりにすることになるだろう。ヨーロッパやアメリカなどの様々な場所の内外で、包摂と排除が展開する状況について理解を深めると同時に、いかなる倫理的応答が可能なのかについても深く掘り下げる機会としたい。


【プログラム】(敬称略)

  1. 開会(13:00ー13:10)
  2. 公募研究報告(日本国際政治学会・関東地区院生研究会)(13:10ー14:40)

    報告者1 榎本珠良(東京大学)
     「セラピー統治とその脆弱性
    ―北部ウガンダ・アチョリ地域の「伝統」をめぐって―」

    報告者2 富樫耕介(東京大学, 日本学術振興会特別研究員,ユーラシア研究所研究員)
     「平和構築と「未(非)承認国家」
    ―チェチェン・マスハドフ政権の「外交」政策(1997-99)―」

    司会者 上原賢司(早稲田大学)
    討論者 岩下明裕(北海道大学)、小川有美(立教大学)

  3. シンポジウム(15:00ー18:30) 

    報告1 浦山聖子(日本学術振興会特別研究員)
        「移民の正義論におけるリベラリズムとナショナリズム
         -経済的再分配の手段としての移民の受け入れ-」
    報告2 森達也(早稲田大学)
        「言語行為論とセキュリタイゼーション」
    報告3 土谷岳史(高崎経済大学)
        「EUの移民管理と市民性」
    報告4 前田幸男(国際基督教大学)
        「EU移民政策の政治社会地理学的考察」

    司会者 石川一雄(専修大学)
    討論者 岩下明裕(北海道大学)
         土佐弘之(神戸大学)
         五野井郁夫(立教大学)

  4. 閉会(18:30ー18:35)