日本国際政治学会第7回奨励賞決定のお知らせ (2014年11月20日)

日本国際政治学会第7回学会奨励賞の選考報告

 2014年度(第7回)の学会奨励賞は、石田智範「日米関係における対韓国支援問題、1977―1981」(『国際政治』176号)に決定しました。
 学会奨励賞選考規程に基づき、選考対象となった論文は、合計22篇(2013年度に発刊された『国際政治』及びInternational Relations of the Asia-Pacific所収)でありました。
 9月9日に開催された学会奨励賞選考委員会において、「選考の手順」に基づき、第一段階審査では、上記の論文1篇のみに一定の基準をクリアする点数が与えられ、第二段階審査では、この論文を対象に、学会奨励賞に値するかについて、多面的な評価と議論を行い、その結果、出席した審査委員全員の一致した意見として、石田智範論文を受賞論文に推薦するに至り、9月23日の理事会にて承認されました。
 石田智範論文は、日本の対韓支援問題について、朝鮮半島をはじめアジア太平洋における安全保障の負担の分担をめぐる日米間交渉の一環として捉えつつ、その政策決定過程を実証的に分析したものであります。日本の対韓経済支援が安全保障の必要と明示的に結び付けられるのは、全斗煥政権の要請に端を発し、1983年に中曽根首相の政治決断で実現することになる総額40億ドルの「安保経済協力」が最初の例となります。この論文は、いわばその前史に当たる1977~1981年の米国内の政策決定および日米間の外交交渉過程に焦点を合わせることで、その意味や文脈について、新たな解釈を試みています。従来の研究や文献では、この「安保経協」について、日韓の外交交渉や中曽根首相の政治決断が主に強調されました。それに対し、この論文は、1970年代後半以降、日米間で展開された「同盟の負担分担」をめぐる交渉過程で、日本の防衛力増強、在日米軍駐留経費分担の拡大、戦略的要地への経済支援の拡充などの3つの間の「配分」と「連携」が争点であったという枠組みを提示し、その中に対韓支援問題を位置づけています。
 この論文は、以下の点で高い評価を得ました。第一に、問題提起、先行研究との関連、分析枠組みの提示、論点の実証など、論文構成の明確さです。限られたスペースの中で、独創性のある分析枠組みを提示し、多様な要因に目配りしつつ、実証的かつ包括的な解明を試みた点で、他の論文に比べ、優れていると評価されました。第二に、日米間の外交交渉のみならず、米国内の政策決定過程について、政策担当者のレベルにまで踏み込んで詳細に分析している点です。具体的な知見に加え、対韓支援問題をめぐる米国の対日・対韓政策の全体像を示した点も評価されました。第三に、日本における近年の外交史研究の共通した特徴ですが、マルチ・アーカイヴァル研究としての高い実証性であります。日米韓の外交文書を幅広く利用することで、新たな事実の発掘のみならず、立体的な視点の提示にも成功しています。

(学会賞奨励賞選考委員会主任 李鍾元)

受賞の言葉

石田智範

 このたびは第7回学会奨励賞の栄誉を賜り、誠に光栄に存じます。学会ならびに選考委員の先生方、編集、査読の労をおとり頂いた先生方に厚く御礼申し上げます。私を一から鍛え上げ、ここまで導いてくださったのは指導教授の添谷芳秀先生です。御礼の気持ちを添えて受賞の報告ができますことを、心より嬉しく存じます。
 私はこれまで、戦後日本の対朝鮮半島外交について研究を進めてまいりました。受賞論文は、1970年代後半に日米で同盟の負担分担が問題となった際、日本の韓国に対する支援のあり方が大いに争点となったことに着眼し、その意味合いについて実証的に考察したものです。それは同時に、日本の対朝鮮半島外交において対米関係上の考慮が要因としていかに作用していたのかを明らかにすることでもあります。しかし、戦後日本の対朝鮮半島外交は、もとより対米考慮のみで語り尽くせるものではありません。今後は他の側面、とりわけ北東アジアの地域秩序をめぐる日本の志向性との関連についても、考察を深めていきたいと思っております。
 戦後における日本と朝鮮半島との関わりに目を向けますと、それが含意する政治事象の広がりと深さに驚かされます。日本の内政との関わり、朝鮮半島を舞台とする政治の特殊性、米国の東アジア政策のダイナミズム、グローバルな国際秩序の普遍性と特殊性。これら諸相の重なりを前に、ようやく入口を見つけた思いです。それぞれに先達の研究に教えを請いたく、一層のご指導とご鞭撻を賜りますよう何卒宜しくお願い申し上げます。
 このたびの論文を書き上げるにあたっては、多くの方々のご学恩にあずかりました。また何人かの先生からは、公刊後に丁寧なコメントを賜りました。論文の随所に、おひとりおひとりのお言葉が思い返されます。ここにあらためて深く感謝申し上げますとともに、このような学術文化の恩恵に浴した一人として、その継承に努める責任を感じております。
 昨今の東アジアは難しい局面にあります。日本をはじめ関係各国が一つ一つ賢い選択を重ねていく上で何かしら資するところがあればと願いつつ、引き続き基礎研究の積み上げに精進していきたいと存じます。


学会奨励賞授賞式(2014年11月15日)