JAIR Newsletter
日本国際政治学会ニューズレター
No. 99   May 2003

非国家主体についての理論化促進を

田中明彦(東京大学)

 かつて国際政治経済の入門書のまえがきに、高坂正堯は「国際政治経済現象の理解は、やや高級な常識と思ってもらえばよい。たしかに人間のやることは国によって異なるが、驚くほど変わったことは滅多にないもので、柔軟で健全な常識を働かせば大概のことは分かる」と書いた。そして、国際政治経済の学習・研究にとっては、「良質の百科事典と地図、あるいは要覧とハンドブック」を適時参照することで、理解を増やしていくことが大事だと指摘していた。

いかにも高坂らしい言い方だと思うし、正しいに違いない。しかし、国際政治の研究を専門にしている、あるいはそれで飯を食っていると称する人間は、「私たちのやっていることは、やや高級な常識です」と言ってすませておいてよいだろうか。一方では、お前たちのやっていることはそんなに「高級ですかね」と言われるような気もするし、他方、「常識」だというのであれば、それで「専門」と言えるのかと問い詰められそうである。

 もちろん、社会を対象にした学問である。これが「常識」とかけ離れたものであるはずはない。しかし、学問が社会のなかでそれなりの待遇を与えられているとすれば、その「専門性」のある部分は、将来的には常識の一部となるにしても、現在の常識とはある程度は区別されうる「専門的」な方法なり知識でなければならないのではないか。

 21世紀に入り、9・11事件からイラク戦争さらにはSARS問題までも経験した世界において、国際関係を分析する学問としての国際政治学ないし国際関係論は、一体どのような「専門性」を持っているといってよいだろうか。私は研究者の本分は、自らの実質的研究を促進することであって、他の研究者の研究について論評をすることではないと思っている。誰それの研究が良くて、誰それのはだめだとかいう批評ばかりしていて、自分の研究を進めないのは、本格的な研究者ではないだろうと思っている。しかし、実質的研究のために先行研究の整理が不可欠であるのと同様、時には学問全体にとって在庫調査をすることは必要だと思う。一体、21世紀初頭の世界を前提としたとき、国際政治学にはどれだけ学問として専門性を主張しうる道具立てがあるのだろうか。この道具立ては現在十分だろうか。さらに開発すべき専門性があるのではないか。

 もちろん、伝統的国際政治学の重視してきた様々な考え方やモデルは、依然として重要である。権力政治の行動としてのバランスやバンドワゴン、規範としての主権、政策決定に関する様々なモデルなどである。国際政治におけるいわゆるリベラルな考え方に基づくさまざまな概念や理論も忘れてはいけないだろう。相互依存、レジーム、民主主義による平和などなどの考え方である。

 1980年代に北米を中心に行なわれたネオリアリズムとネオリベラリズムの論争は、私はあまり感心しなかったが、それでもその結果として、学界のかなりの部分に、合理的選択という考え方が普及し、ゲーム論的な物の見方が広まったことは、専門性を高める上では有用だったと思う。さまざまな国際政治事象を、たちどころにゲーム・マトリックスに翻訳し、その上で解説できるというのは、単なる「常識」ではないからである。他分野からの輸入であるとはいえ、公共財の理論や集合行動に関する理論が、国際政治のさまざまな側面について分析する際に援用されることになったのは、ジャーナリズムにおける「常識」を超えるものであろう。

 しかし、近年ますます重要性を増しているにもかかわらず、あまり「専門性」が高まっているように見えない領域もある。それは「非国家主体」についての分析である。

 もちろん、NGOやNPOに関する文献や研究が増えているのは間違いない。9・11事件もあったからテロについての研究も増加している。いうまでもなく多国籍企業についての研究は、すでに相当長い歴史がある。しかしそれにもかかわらず、私の印象では、これらの研究の多くは「記述」を中心にしたもので、理論的には「定義」と「分類」面での貢献が主要なもののように思える。

 今後の国際政治学が21世紀の現実に対応しつつ、しかも「専門性」を発揮していくものとすれば、是非とも「非国家主体」の理論を整備していかなければならないのではないかと思う。非国家主体の政策決定論は、これまでの国家中心の政策決定論を当てはめればよいのか。合理的選択の考え方で押し通すとすれば、どこに注意する必要があるのか。国家と国家はバランスしたりバンドワゴンしたりするとすれば、非国家主体の相互間の行動や国家との行動はどのような概念でとらえればよいのか。国内社会を前提とした利益団体論などから輸入可能な理論はないか。非国家主体と国際社会全体のガバナンスの関係、システム状態と非国家主体の活動の関係などをどう理論化するか。――などなど問題は尽きないと思う。

特集:2002年度年次大会概要(2)

《分科会概要》

分科会A-1 日本外交史1

 若手会員による以下の3報告が行われた。

樋口敏広会員(筑波大学大学院)「核実験問題と日米関係―「教育」過程の生成と崩壊を中心に―」

黒崎輝会員(明治学院大学)「佐藤政権の核政策とアメリカの「核の傘」――「アメリカの核抑止力への依存」政策の公式化・定着とその背景――」

潘亮会員(日本学術振興会特別研究員)「日本の『経済大国化』とアメリカ―安保理常任理事国入りをめぐる日米関係、1967年−73年を中心に―」

 まず樋口報告は、一九五四年の第五福竜丸事件は反核感情がナショナリズムと共鳴し激しい反核運動を巻き起こすが、吉田首相はこれを賠償問題として処理して失敗し重要な教訓を鳩山、岸政権に遺したとする。他方、核の脅威を共産主義の脅威に優先させる日本の世論に懸念を抱く米政権は、核政策の変更よりも、組織的な情報宣伝活動を展開して核の脅威の軽減に努める。報告者はこれを「教育過程」と捉え、それは核実験問題を規定する両国間の外交枠組となったとする。しかし岸首相は、吉田の遺産を直視し、核の恐怖をソ連の脅威に優先させるという国民意識を背景に反核実験外交に転じ、核問題で共産主義勢力に主導権を奪われることを阻止し、ひいては保守勢力の強化を目論み、その結果、米側の教育過程は挫折するにいたった、と論じた。

 次に黒崎報告は、「米国の核抑止力への依存」という方針が日本政府の主体的選択の結果として確立した経緯を論じた。すなわちこの方針は1968年1月の衆議院本会議において佐藤首相によって公式に表明され、非核三原則と並ぶ核四政策の一つとなるが、その過程の研究上の空白は、米国による「核の傘」の提供と核抑止力への依存政策の選択とを区別する視点が冷戦思考のなかで失われていたからとする。この研究は同政策を米国による核の押しつけや対米追随姿勢の表れと捉える認識を再検討する試みでもある。冷戦後、日米安保条約の破棄を条件としない同政策の代替案が民主党から提出されるなど、新たな核・安保論議が始まろうとしている現在、本研究の意義は大きい。

 最後の潘報告は、国際的地位の向上を目指す経済大国日本と、影響力の維持に懸命である超大国アメリカとの葛藤から浮上してきた日本の国連安保理常任理事国入り問題に焦点を当てる。日本は1967年以降、五大国中心のサンフランシスコ体制に挑戦し、自らの経済力に相応しい安保理常任理事国の地位を獲得する方針を国連内外で明らかにした。他方、米政府は現常任理事国としての特権の温存と日本のプライドをある程度満足させる必要性の間に揺れていたが、この両者の駆け引きを解明した。当時は日本のナショナリズムや大国志向を軍事大国化を避ける方向へ「善導」することが米国にとって最大の関心事の一つであったが、そうした文脈でも今日的意味は重要である。

 以上の報告に対して石井修会員(明治学院大学)より、いずれも日米の第一次史料を駆使した高水準の研究として評価しつつ、いくつかの補完的説明と課題を提起された。ことに反核実験に関する岸の積極性の理解のためには岸の個性についての洞察が必要であると指摘された。フロアーからは黒崎報告に対して、神谷万丈会員、佐藤丙午会員から、米国の核戦略における核四政策の位置づけ、核抑止を保障する具体的計画の有無等の質問がなされた。また潘報告には、井口武夫会員から外務省において同問題にかかわった経験から有益なコメントがなされた。参加者は70名に及び盛況であったが時間切れとなった。

(波多野澄雄:筑波大学)

分科会D-3・E-3 ロシア・東欧 3

 ロシア・東欧3では「国際社会の民主化支援」という共通テーマで、久保慶一氏(早稲田大学大学院)が第一報告として「デイトン合意後のボスニアにおける選挙と民族問題」の報告を行った。久保氏は、和平合意後のボスニアにおいて民主的に選出された新政権が成立しているにもかかわらず国際社会が今なお介入せざるを得ないのは未解決の国家性問題と民族間権力分有制度に起因する政治の機能不全があるためであることなどを指摘した。討論者の月村太郎会員(神戸大学)から、ボスニアにおいて何が特殊なのか、特に領域的境界線や市民権の主体など国家性の問題では何が特殊なのか、リンスとステパンが提起した国家性概念を規定する5つの基準はボスニアにおいてはどのように当てはまるのかなどについて質問がなされた。林、坪内、大平、羽場の各会員から国家性や民族間権力分有制の追加論点、ナショナリズム、多極共存論、国際社会関与などについて興味深い有益な発言があった。

 第二報告として、宮脇昇会員(松山大学)が「CIS諸国と民主化支援レジームとしてのOSCE−その政治的限界と可能性」の報告を行った。宮脇会員は、OSCEには資源と権限の限界に加えて規範に内在する限界があること(ヘルシンキ宣言と対比して)、露・米・ベラルーシなどアクターの動向によって、また民主的メディア、警察の人権教育、オンブズマン制度などの導入に関するテクニカルな支援によって可能性が開かれることを指摘した。討論者の服部会員(ロシア東欧貿易会)から、価値を説くだけの民主化支援には限界があること、CSCEプロセスの教訓として人間の移動を含めたアプローチが成果を生むこと、中東欧諸国がEU入りに伴いCIS諸国民にビザ制度を導入することは後退であるという問題提起や、ベラルーシを国際的孤立に追いやることの是非などについて質問がなされた。末澤、坪内、南野、岡田、湯浅の各会員から米国介入の是非、国際社会弱腰の理由、CIS の他事例、規範の限界、ベラルーシ強硬態度の理由などについて有益な質問やコメントがあった。30−40名の参加のもとで議論が活発に行われた。  

(岩田賢司:広島大学)

《ISA年次大会参加記》

 この度日本国際政治学会国際学術交流基金の助成を受け、本年二月ポートランドで開催された2003年度ISAの年次大会に参加することができた。大会のテーマは「知識の構成と蓄積」であった。テーマにふさわしくF・クラトチウィル、S・スミスらその著書でしか知ることのできなかった高名な学者が多数参加しており、そうしたパネルを拝聴することができ、国際政治学の学問の深さを改めて感じた。私が参加したパネルは、サイモン・フレーザー大学の川崎剛先生がオーガナイズしてくださった「アジア太平洋の多国間主義におけるコンストラクティビズム対ラショナリズム」であった。私は自分の学位論文をベースに、第二トラック外交の主体であるアジア太平洋安全保障協力会議の理論的な考察を行った。そのなかで知識共同体アプローチによる分析の限界、クラトチウィルの構成主義アプローチの援用可能性を中心に発表した。討論者のS・ナライン先生(セント・トーマス大)からは、アセアンウェイの限界とアセアンウェイでなければ、どのような共通理解のもと多国間安全保障協力が可能かといった今後の研究の指針となる指摘を頂いた。フロアーからも構成主義をアジア太平洋の文脈で研究する際にコミュニケーションやソーシャリゼーションといった面にも焦点を当てるべきだといった有益なコメントを頂いた。旧知のB・ジョブ教授の軽妙な司会のもとで、有意義な経験を積ませて頂くことができ、今後の研究へつなげてゆきたいと考えている。

重政公一(大阪大学大学院)

《研究分科会責任者連絡先(2003年4月現在)》

※本ホームページでは各責任者の連絡先は掲載いたしません。お手元の当該ニューズレターをご覧ください。

代表幹事:高松基之

◆ ブロックA(歴史系)
@ 日本外交史(黒沢文貴)
A 東アジア国際政治史(滝口太郎)
B 欧州国際政治史・欧州研究(植田隆子)
C アメリカ政治外交(高松基之/ブロックA幹事)

◆ ブロックB(地域系)
@ ロシア・東欧(岩田賢司/ブロックB幹事)
A 東アジア(平岩俊司)
B 東南アジア(田村慶子)
C 中東(酒井啓子)
D ラテンアメリカ(乗浩子)
E アフリカ(青木一能)

◆ブロックC(理論系)
@ 理論と方法(石田淳)
A 国際統合(小久保康之)
B 安全保障(土山實男/ブロックC幹事)
C 国際政治経済(山田高敬)
D 政策決定(長尾悟)

◆ブロックD(非国家主体系)
@ 国際交流(川村陶子)
A トランスナショナル(関根政美)
B 国連研究(庄司真理子/ブロックD幹事)
C 平和研究(多賀秀敏)

◆関西地域研究会(豊下楢彦)

◆名古屋国際政治研究会(定形衛)

◆九州・沖縄地域研究会(薮野裕三)

◆東京地区大学院生研究会(野崎孝弘)

《2002-2004年期理事・監事名簿》

2002-2004年期理事、監事の名簿を掲載します。理事・監事は、昨年7月に評議員を有権者とする選挙を行い、8月1日の理事選挙管理委員会による開票の結果、確定したものです。

理事

天児慧、五百旗頭真、五十嵐武士、石井修、伊東孝之、猪口邦子、猪口孝、入江昭、大芝亮、小此木政夫、我部政明、菅英輝、北岡伸一、吉川元、木畑洋一、国分良成、古城佳子、佐々木雄太、下斗米伸夫、添谷芳秀、高橋進(東京大学)、田中明彦、田中孝彦、田中俊郎、納家政嗣、羽場久子、波多野澄雄、初瀬龍平、藤原帰一、毛里和子、山影進、山本武彦、山本吉宣、油井大三郎、李鍾元(以上)

監事

池井優、大畠英樹、中嶋嶺雄(以上)

《第34回国際シミュレーション&ゲーミング学会大会(ISAGA2003)のご案内》

 ISAGAの2003年大会が、日本学術会議と日本シミュレーション&ゲーミング学会(JASAG)がホストとなって、「シミュレーション&ゲーミングの社会的貢献と責任」をテーマに、8月25日−8月29日、かずさアガデミアパーク(千葉県木更津市)で開催されます。日本国際政治学会も後援学会になっており、本学会員は参加費などで「会員扱い」になります。詳細の問い合わせは、下記までご連絡ください。

ISAGA2003組織委員会
〒223-0062 神奈川県横浜市港北区
      日吉本町1-4-24
      科学技術融合振興財団(FOST)内
Tel: 045-562-5447 FAX: 045-562-6132
E-mail: secretary@jasag.org
URL: http://www.gamism.com/~jasag/secretary/
ISAGA2003のURL: http://www.isaga2003.org/

《各種委員会便り》

《機関誌への投稿:編集委員会より》

1. 独立論文をどしどし投稿して下さい

 すでにご案内のように、今年度から毎年、独立論文のみからなる「独立論文号」(仮称)が1号発行されることになり、第1号が明年2月刊行の予定です。掲載論文の本数が大幅に増えますので、どしどし応募して下さい。現在、院生会員や若手一般会員からの投稿が多数を占めていますが、中堅以上の会員も是非奮ってご投稿下さるようお願い申し上げます。執筆要領については『国際政治』131号を参照下さい。

 他の特集号でも独立論文を掲載する方針に変わりはありませんので、「独立論文号」の締め切りはとくに設けませんが、明年2月刊行に間に合うためには、レフェリーによる判定の都合もありますので、目安として8月末までには投稿いただく必要があります。なお投稿先については、執筆要領6(7)の規定に拘わらず、『国際政治』131号または132号の巻末の記事にしたがって、下記宛にオリジナル1部、コピー4部を送付してください。

 古城佳子(副主任・独立論文担当)

2.『国際政治』掲載論文が決まるまで

 機関誌に掲載される論文や書評がどのようにして決まるのかに関する質問が多く寄せられていますので、この機会にまとめてご説明いたします。

(1)特集論文について

 『国際政治』に掲載される論文のうち特集論文は、基本的にその特集の編集責任者が決めています。原則としてNLを通じての公募に対する応募論文の中から選ばれますが、場合によっては編集責任者からの依頼に応じた寄稿論文の中からも選ばれます。掲載の基準はいうまでもなくその特集に相応しい学術論文の水準に達しているかどうかですが、具体的な取捨選択は編集責任者に一任されています。

(2)独立論文について

 各特集号には特集と関係ない独立論文も掲載されており、また今年度からは独立論文のみから構成される「独立論文号」(仮称)も発行されます。そこで投稿論文数の増大を想定して、審査手続きについては従来の方針に基本的に従っていますが、何点か明確にした改正点について運営委員会の承認を得ました。現在の独立論文の審査手続きは次の通りです。(1)投稿された論文に対し、独立論文審査委員会(独立論文担当副主任を委員長とし、書評担当副主任と主任とを委員とする3名で現在は運営)でレフェリー2名を選定する。なお、レフェリー選定に際しては、投稿論文の内容に詳しいと同時に、師弟関係や職場での緊密な関係にない会員に依頼するようにしています。また、審査に際しては、レフェリーについても投稿者についても匿名を厳守しています。(2)レフェリー2名の判定を総合的に評価して、(A)掲載(B)修正意見に十分に応えた改訂論文を再提出したら掲載(C)修正意見に対してどのように応えたかレフェリーが再審査する (D)不掲載、のいずれかを独立論文審査委員会が決める。(3)審査結果を投稿者に通知するが、(B)(C)については改訂論文の再投稿を待ち、再投稿論文について各々適切な手続きをとる。なお、再投稿は1度のみ認めます。つまり、再投稿論文の審査結果は、(A)か(D)になります。掲載が決まった論文については、その判断を下した時点での原稿が最終的な完成原稿と見なされ、その後の加筆・補筆は一切認められません。

(3)書評・書評論文

 書評は、対象著作の選定も評者の選定も、全て書評委員会(構成は『国際政治』各号巻末に掲載)でおこなっています。書評は全て書評委員会からの依頼によるもので、書評の投稿は受け付けておりません。なお、書評に取り上げてもらいたい学術書があれば、書評委員の会員にご提案下さい。

(編集委員会主任:山影進)

《『国際政治』137号の特集論文募集》

 『国際政治』137号(2004年5月刊行予定)は「国際公共秩序の理論をめざして:国連・国家・市民社会」を特集テーマとすることになりました。特集論文を公募しますので、奮ってご投稿ください。

 21世紀の国際社会における秩序形成をめぐって、伝統的な国際主体である国家のみならず、国連や市民社会の積極的な関与が重要視されています。同時に、国連の限界ないし改革の必要性が話題になる一方で、国連の抱える問題や国連に対する幻滅も指摘されています。市民社会をめぐっても、市民社会に根ざした諸主体・団体が国家や国際機構とどのような関係を築きうるのか、さまざまなケースが見られる一方で、まだ明確な理論が現れていません。

 このような状況を踏まえて、国連と国家、国連と市民社会、国連・国家・市民社会といった異なるレベルの主体間の具体的関係に焦点を当てながら、国際公共秩序を捉える理論について議論を発展させたいと思います。従来の国連研究やガバナンス論を超える新しい展望が開かれることを願っています。理論と実証とをダイナミックにかみ合わせた論文を奮ってご投稿ください。

 投稿希望の会員は6月末までに庄司真理子宛、論文題目と要旨(400字程度)をご連絡ください。全体の構成などを考慮して、改めて当方より投稿をお願いします。原稿の最終締切は、2004年1月末です。なお、特集論文として掲載するかどうかは最終原稿を踏まえて判断しますので、予めご承知おきください。

(編集責任者:庄司真理子)

≪2003年度大会実行委員会より≫

 本年度の年次大会は10月17日(金)から19日(日)の間、つくば国際会議場(エポカルつくば)および隣接の研究交流センターを中心に開催されます。企画研究委員会を中心としたプログラムの編成もほぼ終わり、案内は8月下旬に会員宛に他の印刷物とともに配送される予定です。大会運営に関する事項は、企画研究委員会から筑波大学を中心とした大会実行委員会に移ります。実行委員長は中村逸郎、副委員長は鈴木一人です。宜しくお願いいたします。

(大会実行委員長:中村逸郎)

《事務局便り》

 遅くなりましたが、昨年11月の新理事会・運営委員会発足以後の活動について、まとめてご報告いたします。

○第1回運営委員会が2002年12月6日(土)午後6時−7時半に、法政大学現代法研究所会議室で開催されました。5名の入会申込者の仮承認がなされたほか、各委員会の人事構成の承認、活動方針の報告、新旧運営委員会の引継ぎが行われました。

○第2回運営委員会が2003年2月22日(土)午後2時−6時に、法政大学現代法研究所会議室で開催されました。報告・審議事項のうち、各委員会からのお知らせを除き、主なものは以下のとおりです。

・13名の入会申込が仮承認されました。

・和文機関誌『国際政治』の独立論文号の新設に伴い、論文のレベルを保ちつつ、量的確保をめざすため、研究大会部会論文の活用、院生会員への積極的な周知や呼びかけの必要が強調されました。ご協力をお願い申し上げます。

・会費値上げに伴う海外在住会員の会費について、郵送料1000円(現行どおり)を加算した15000円とし、和文学会誌の増刊に伴う郵送料負担増については、今後状況を検討していくことにしました。ちなみに、夫婦会員の会費は、一人1万円です。ご理解とご協力のほどよろしくお願いいたします。   

(事務局長:李鍾元)

○学会運営についてのご意見、お問い合わせなどは、下記の立教大学事務局までご連絡ください。なお、一橋大学事務局は従来どおりです。

日本国際政治学会・立教大学事務局

〒171-8501 東京都豊島区西池袋3-34-1
立教大学法学部・李鍾元研究室気付
Tel: 03-3985-2934
Fax: 03-3983-0174
E-mail: jair@wwwsoc.nii.ac.jp

日本国際政治学会・一橋大学事務局

〒186-8601 東京都国立市中2-1
一橋大学磯野研究館内
Tel: 042-580-8842
Fax: 042-580-8881

《若手会員の声》

 最近、当学会が進めている諸改革は、われわれ若手会員にとって大きなチャンスを与えてくれている。まず、本年度から独立論文集が加わり、『国際政治』が年4冊体制となったことで、院生会員を含め若手に発表の機会が広がった。近年は1年に1度しか大会が開催されないことになっているために、これは時宜に適したものである。また、英文ジャーナルも軌道に乗っている。ただし、今後はなるべくならば会員による投稿が活発となることを期待したい。そのためには毎号、最低1〜2本は会員用の枠を設けて、会員からの積極的な投稿を促すようにすればどうであろうか。

 さらなる改革に目を転ずれば、いっそうのホームページの充実を期待したい。これには2方向の取り組みが考えられる。一つは会員向けのもので、このホームページを、各会員の学会発表や投稿論文について会員からの自由な討論の場として活用するという点である。二つ目は、広く国民に対する国際問題についての知識の普及やさまざまな政策の選択肢を紹介する場とすることである。北朝鮮の核開発、イラク戦争など、国民の間でも国際問題に対する関心は非常に高い。そこで本学会が社会貢献のあり方の一つとして、客観的データとともに平易で簡潔な議論を紹介できれば有用であると考えられる。

(一院生会員)

《編集後記》

 99号の巻頭言は、執筆予定の会員の都合が悪くなり、締め切りの数日前に急遽、田中明彦会員(前事務局長)にお願いしたものです。ちょうど、「非国家主体」に関する機関誌137号の特集論文募集の要領が公示されていますが、投稿希望の方には大いに参考となるでしょう。田中会員には、ご多忙のところ、多謝。

 次号はちょうど100号となりますが、100号記念と学会創設50周年を控えた「回顧座談会」を実施し、その関連記事の特集号となる予定です。

(NL編集委員会)

〜オンライン・ジャーナル用 新ユーザ名とパスワードに関する訂正とお詫び〜

!!ご注意ください!!

 International Relationship of the Asia Pacificの1号とともに発送いたしました広告にて、学会員用のユーザ名、パスワード名の変更についてお知らせいたしましたが、ユーザ名に誤りがありました。お詫び申し上げますとともに、ここに訂正いたします。

(※非会員の不正アクセス防止のため、訂正内容についてはお手元の当該ニューズレターをご覧ください。)

 皆様には大変ご迷惑をおかけいたしまして、申し訳ございませんでした。重ねてお詫び申し上げます。

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「日本国際政治学会ニューズレター No.99」

(2003年5月20日発行)

発行人 下斗米伸夫
編集人 波多野澄雄
〒305-8572 つくば市天王台1-1-1
筑波大学人文社会科学研究科
TEL 029-853-6141 FAX 853-6143
E-mail: hatano@social.tsukuba.ac.jp
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