JAIR Newsletter
日本国際政治学会ニューズレター
No.96 August 2002

バークレーから見た9・11後のアメリカ

木畑洋一(東京大学)

 何となく気になる地名というものがある。ベトナム戦争の時代、大学紛争の時代に学生生活を送った私たちの世代にとっては、バークレーという地名もその一つである。そのバークレーで、昨年(2001年)10月初めから今年の3月末まで在外研究生活を送ってきた。1960年代の革新運動のメッカであったその地から、9.11事件後の好戦的な愛国主義に包まれたアメリカを観察することになろうとは、在外研究の計画を立てた時には当然のことながら全く思ってもいなかった。
 9.11直後、テロへの報復戦争に必要な軍事力を行使する権限を大統領に与える決議に、米下院でただ一人反対した議員バーバラ・リーは、バークレー選出の下院議員である。そのことから、バークレーの批判精神は健在であるとの予測を抱いて滞米生活をはじめたが、その予測は裏切られなかった。大学キャンパス近くのアパートに到着し周囲を見回しての第一印象は、眼に入る星条旗が少ないということだった。到着翌日に会ったある中国人の教授は、少し車で走れば星条旗がたくさん翻っている地域をみることができるけれど、バークレーでは旗は少ないよ、と私の感想に同意してくれた。
 到着から1週間後、アフガニスタン攻撃が始まった。キャンパスの中心スプラウル広場で抗議集会が開かれるというので早速のぞいてみた。3〜400人位の人が集まり、学生、教員、労働組合代表などの反戦演説に耳を傾けていたが、むしろ目立ったのは星条旗を掲げて「テロリストをやっつけろ」と叫んでいた数十人の戦争支持派の方だった。その数日前の『ニューヨーク・タイムズ』は、バークレーやサンフランシスコのあるベイ・エリアで反戦運動が展開されるのは不思議でないが、今回の特徴は、それに対抗して星条旗を振る運動があることだ、と指摘していたが、まさにそういった状況が展開していたのである。集会が終った後のスプラウル広場では、反戦派と戦争支持派の間での討論の輪がいくつもできていた。
 キャンパスでの反戦集会は、これが最大だったようである。2日後の次の集会になると、すでに参加人数は150〜200人程度に減っていた。ここでは、日系のR.タカキ教授が、第二次世界大戦中の日系人収容問題について話すのを聞くことができた。バークレーから観察していて一つ気づいた点は、アラブ系の人々に対する9.11以降の政府や愛国的世論の姿勢との関連で、日系人収容問題がきわめて頻繁に論及されていたことである。12月の真珠湾攻撃60周年に際しても、ベイ・エリアでは日系アメリカ人とアラブ系アメリカ人の交流会が開かれた。9.11をめぐる日本要因ともいうべきものの中で、この点には日本人としてもっと関心を払うべきであろう。
 その後、大規模な反戦集会こそ開かれはしなかったが、バークレーの反戦運動家たちは、「戦争停止を求めるバークレー連合」という組織を作って、地道に活動を続けていったようである。また9.11問題は、当然大学での授業内容にも影響を及ぼした。とくに、1月に新しい学期がはじまると、それをタイトルに掲げる授業もあらわれてきた。たとえば、「9.11以降の外交政策の諸問題」という授業である。これは夜7時から開講され、学生の単位になると同時に、一般の人も何の手続きもなしに聴講できる公開授業で、研究者や元政府高官などがリレー講義を行った。
 この授業のハイライトは、当初の講師リストでは明示されていなかったチョムスキーの講義であった。それは帰国の約2週間前のことである。ブッシュはテロ国家を批判するがアメリカ合衆国こそがテロ国家であると論じる激しい講義は、学生と市民から成る聴衆に大いに受けていた。その講義に臨んだ日の昼間には、やはりキャンパスの中で、前述のバーバラ・リー議員の話(「異議申し立てができない民主主義は民主主義ではない」と力説)を聞いたばかりであり、このダブルヘッダーは、バークレーという土地の意味を改めて感じさせてくれた。帰国後、大学行政に巻き込まれて、バークレーでの経験を咀嚼できずにいるのが、残念でならないこの頃である。

伸び伸びと開かれた学会へ

猪口 孝(東京大学)

 日本社会が大きな移行期に入っています。学会だけでなく、企業、官庁、そして多くの団体がその運営のあり方について大きな変更を求められています。変更の方向としては開放と自立という言葉でまとめられていくのではないかと思っています。開放とは一定の要件を満たせば誰でも参加できる、誰もが機会を与えられる、誰もが活動の場を利用できるというものです。自立とは政府の資金や融資に過度に依存するのではなく、いわば自己資本率を高めるといってもよいかもしれません。さらに活動についても自立した方針と計画と運営が求められています。
 このような方向は日本社会にはこの半世紀間あまり慣れてこなかったものです。学会だけでなく、企業や官庁そして種々の団体が主要な標的としてこのような法律・制度変更に直面しています。本学会は財団法人として登録されており、このような変更をより強く求められています。本学会の所管官庁である外務省による昨年の監査に基づく勧告のひとつとして、独立事務局設置があります。さらに2004年に実行される予定の文科省による国立大学の独立法人化も大きく関連してきます。このような情勢のなかでキャンパスに寄生するような現在の多くの文科系学会のあり方が難しくなりそうです。いうまでもなく、独立事務局設置には一定の費用がかかります。
 より重要な動きとして、開放性を高めることがあります。開放された学会とはどのようなものでしょうか。第一はその運営がすべて約款にしっかりと基づいていること、第二はその会計が会計士のガイダンスと審査の下でしっかりと行われていること、第三は当該組織の目的を共有するものに対しては等しく機械が開かれていること、第四は当該組織の目的に向かってしっかりと活動し、その成果を社会に還元していくことです。仲良し会のような学会に所属しているだけで事足れりというわけにはいかなくなってきました。社会からの問い合わせに応答できること、社会に成果を還元することが、学術成果という形で問われます。そうした役割を果たすに当たって、ひとりひとりがベストを尽くし、公開することが大切になります。学会としてはそのようなベストが出しやすい環境をつくることに加えて、公開の場所を提供することが重要になります。それが年次研究大会であり、和文誌、英文誌です。英文誌はアジアにおいて海外発信の手段、国際的な学術討論のフォーラムとして先駆的な役割を果たしています。
 本学会和文誌は伝統を誇る、甚だ活発な学術誌です。近年大学教師の採用や昇進にあたって、匿名評価方式でなされる学術誌での論文刊行がひとつの重要な基準になっていることを鑑みて、和文誌に独立投稿論文のスペースを増やすことはこのような時代の趨勢と会員 の要望によく適うものです。
 このような自立性と開放性がより強く求められているなかで、本学会は50周年記念を2006年に迎えます。いうまでもなく、50周年記念は滅多にこないものです。しかもさまざまな困難を乗り越え、不断の前進を成し遂げた本学会員、先輩、関係者の工夫と努力を振り返り、21世紀のこれからの50年を展望するよい機会です。記念式典は東京の真ん中でしっかりとした内容と厳かな形式を保持して行われなくてはなりません。さらに、50年の成果の一端を示す年次研究大会は東京ないしその近郊で行われると思われますが、大筋では小規模であっても、普段の年次大会よりも心持ち賑々しく、先端的な研究成果を世に問うパネル、先輩による回想のパネル、そして外国からの学者を交えたパネルなども多めになるでしょう。このような50周年記念行事も一定の費用を要します。それも自己資金なしに、補助金申請も叶わないし、まして寄附金を募ることも出来ません。
 このような二つの大きな案件を抱えていることを予期し、現執行部は2001年以降、和文誌の費用を従来の3分の1にまで削減しました。年次大会の費用も思い切った削減を成し遂げました。英文誌への刊行補助金(250万円)を獲得、費用を3分の2に削減しました。英文誌の費用削減は刊行第3年度である2003年には大きな課題として俎上されます。このような執拗で、急激な費用削減努力にもかかわらず、2006年までの収支について一定の懸念が強く残ることをよく認識しました。そこで、このような趨勢に鑑みて、本学会は一定の規約改正を理事会で決定しました。入会資格では大学院修士過程在学の院生にも開放しました(2002年4月に遡って実施)。和文誌を年1冊増やすことにしました(2003年4月から和文誌年4冊実施)。そして会員費を現行の1万円から1万4千円としました(2003年4月から実施)。雑誌は年合計6冊刊行となりますが、これだけで店頭価格が1万2千円となり、1万円会費は到底無理です。それに2004年の独立法人化などに象徴される団体運営の仕方の制度的・財政的な変更に伴うことに対する準備と本学会50周年記念行事のための準備は普段よりも費用の掛かる案件を抱えています。いずれも上記の情勢変化と本学会の適応の方針から導かれるものです。会員諸氏の御理解を衷心よりお願いする所以です。
 本学会は文科系学会としては大規模で、しかも会費納入率が98パーセントと非常に高く、しかも学会誌だけで年6冊も刊行し、最近始めた英文誌はアジア国際関係について世界第一位の地位をすでに獲得しつつあります。このことは本学会員が強く誇りにもってしかるべきです。さらなる前進をしようではありませんか。

2002年度研究大会について

 2002年度研究大会は、兵庫県・淡路夢舞台国際会議場にて11月15日から17日までの3日間、開催されます。詳細は大会プログラムをご覧いただければと思いますが、ここでは共通論題の趣旨ならびに日韓国際政治学会合同シンポジウムについて簡単に述べます。

1.共通論題
 2002年度は共通論題のテーマとして「国際秩序と反グローバリゼーション」を掲げることにしました。国際秩序は変動したのか、もし変動したとすればそれはどのような意味においてか。この問題について、冷戦の終結、グローバリゼーション、そして主権の変容など、さまざまな視点から議論がなされてきました。今研究大会では、国際秩序とその変容について、反グローバリゼーションという視点をとりいれて報告および討論が展開されることを期待しています。
 もとより、グローバリゼーションという概念が多次元的であり、多義的であるように、反グローバリゼーションということばの意味も決して一義的ではありません。アメリカを中心に進められるグローバリゼーションに対する反発として開発途上国により主張される反グローバリゼーション、アメリカ国内における労働団体を中心とする反グローバリゼーション、さらには、グローバリズムを掲げる地球環境NGOや人権NGOなどが展開する反(経済の)グローバリゼーションなど、多様な形態が見られます。
 反グローバリゼーションのこのような多様性に鑑み、パネル・ディスカッションでは、アメリカ外交、科学技術、そして貧困・開発の3点から議論してもらい、国際秩序とその変容について考えてみたいと思っております。

2.日韓国際政治学会合同シンポジウム
淡路島の研究大会では日韓交流関連で、11月16日(土)に以下のプログラムが予定されております。
日韓国際政治学会合同シンポジウムT(9:30−12:00)
<部会8 北東アジアの地域協力と日韓関係>
  司会 下斗米伸夫(法政大学)
  報告 高原明生(立教大学)
「北東アジアの地域協力と日本外交」
  報告 南宮坤(慶熙大学)
「北東アジア三国の東アジア共同体参加意義と韓日の役割」
  討論 張寅成(ソウル大学)
  討論 小此木政夫(慶応義塾大学)
日韓国際政治学会合同シンポジウムU(13:00−15:15)
<部会9 朝鮮半島の和平プロセスと日韓関係>
  司会 禹K九(嶺南大学)
  報告 平岩俊司(静岡県立大学)
「日朝交渉をめぐる国内政治と国際関係」
  報告 柳浩烈(高麗大学)
「21世紀北朝鮮の対内外政策の変化と韓半島の平和」
  討論 波佐場清(朝日新聞)
  討論 朴在晶(忠南大学)
(文責:大芝亮)

≪対外交流委員会より≫

CEEISA(中・東欧国際関係学会)が主催する国際会議が、ハンガリーのブダペシュトで〇三年六月に開催されることになりましたが、日本国際政治学会もぜひ参加してほしいとの要請がISAからありました。現在のところ、1)日本・東アジア、2)冷戦、3)EU・NATOの拡大、の3本のパネルを組織し、欧米・アジアの研究者も交えた国際パネル報告ができればと考えておりま す。ご関心のおありの方は、対外交流委員会(下斗米伸夫)か、運営委員羽場久美子までご連絡下さい。パネル受付の〆切は、02年8月末となっておりますが、申し込みのあと差し替えは可能かと存じます。ご応募下さい。
(対外交流委員会・下斗米伸夫)

≪シンポジウム「地域学の現状と課題」のお知らせ≫

日本学術会議太平洋学術研究連絡委員会地域学研究専門委員会の主催で「地域学の現状と課題」と題するシンポジウムが以下の要領で開催されます。日本国際政治学会も協賛学会となる予定です。ご関心の向きはふるってご参加ください。
日時 平成14年11月9日(土)10:20-17:30
会場 東京九段 専修大学神田校舎(予定)
構成
総合司会 岡部達味
第1部 地域学とは何か(司会 宇野重昭)
第2部(マルチ)ディシプリンから地域学へ
(司会 原洋之介)
第3部 総合討論 統合的パラダイムを求めて
(司会 板垣雄三・富永智津子)

≪編集委員会より≫

『国際政治』への投稿について
 学会誌『国際政治』では、ご承知のように毎号特集を組んで編集を行っておりますが、それとは別に、特集とは関係のない独立論文を1〜2本掲載しております。会員各位からの積極的な投稿をお待ちしています。執筆にあたっては、『国際政治』125号掲載の「編集および執筆要領」に従って下さい。ご投稿いただいた原稿は、2名のレフェリーの判定により、掲載の可否を決めさせていただきます。
 投稿ご希望の方は、@国分良成主任宛にオリジナル1部、A藤原帰一副主任(独立論文担当)宛にコピー3部、B竹田いさみ副主任(書評担当)宛にコピー1部をお送り下さい。枚数は50枚(400字詰)以内で、投稿の期限はありません。投稿者は必ず、所属、住所、電話、FAX、Eメール番号を明記してください。
 なお学会会員の増加にあわせて、特集だけではなく若手の独立論文をできるだけ多く掲載する必要を痛感しており、今後は現在年間3号発行のところを4号体制に組換え、1号分は独立論文のみで構成する方向で検討中であります。ご意見などございましたら、お寄せください。
国分主任 慶応義塾大学法学部
藤原副主任 東京大学法学部
竹田副主任 獨協大学法学部

『国際政治』第133号原稿募集(2003年5月刊行予定)
 特集タイトル「マルチラテラリズムの現段階」(仮題)
 マルチラテラリズムは、多国間主義や多角主義と訳され、中国では「多辺主義」と表現されています。一般的に、バイラテラリズム(2国間主義)との対比で使用されてきた概念です。外交の現場では多国間主義・アプローチを略して「マルチ」、2国間主義・アプローチを「バイ」と呼ぶことも多々あります。国際社会における多国間主義・アプローチを、本特集号では理論・レジーム論、制度論、歴史的分析、地域的発想、問題領域(イッシュー)の諸分野から多角的に、しかも柔軟に検討したいと思います。
 今回は、原稿の募集期間が極端に短いので、編集責任者からの(1)依頼論文とともに、(2)数本の応募論文を会員から募集いたします。本来、この原稿依頼は前号のニューズレターに掲載することになっておりましたが、さまざまな理由から掲載することができませんでした。(2)の応募論文に関しては、次のような手続きに従いたいと思います。@応募される方は本年10月4日までに、論文の要旨を必ず書面で、編集責任者までお送りください。A採択の可否は10月中旬から下旬に、応募者全員にお知らせいたします。採択に関しては同一のテーマを扱った論文が複数あれば、その中から1本が採択される可能性が高くなります。B採択の可能性がある論文に関しては、改めて原稿の執筆をお知らせいたします。原稿締め切りは、2003年1月15日です。レフリー審査のため、このような時期を設定することになります。C提出された論文は、レフリーの審査を経た上で、最終的に採択の可否が決まります。採択された場合でも、レフリーの助言に従って、原稿の加筆・修正・削除を短期間でお願いすることになります。D修正を求められた論文は、2月20日頃までに修正を済ませ、Eメールの添付ファイルの方法で、編集責任者と中西印刷まで同時にお送りいただきます。Eメール・アドレスは、執筆者の方々へ後ほどお知らせいたします。
 応募される会員は、(1)氏名、所属、肩書き(2)郵便番号、住所、電話番号、ファックス番号、(3)Eメール・アドレスを必ずお知らせください。
 編集責任者:竹田いさみ(獨協大学外国語学部)

『国際政治』第134号原稿募集(2003年11月刊行予定)
 特集タイトル:「冷戦史の再検討」(仮題)
 冷戦の終焉を契機として、中国を含む多くの旧東側諸国から冷戦期の機密外交史料が多数公開され、米国のCold War International History Project などを中心に、冷戦史研究は活況を呈しました。この結果、従来謎とされてきた冷戦史の多数の局面が、実証的に解明されてきました。それだけでなく、冷戦史研究は、アプローチの面でも発展が見えつつあります。冷戦史研究の新しい地平が開かれつつある上記の状況をふまえ、今まで明らかにされてこなかった冷戦史の諸局面についての独創的な冷戦史研究論文を、本特集では募集したく存じます。
 特に、以下のような問題に正面から取り組んだ論考を歓迎いたします。
 (1) 新史料に基づいた新たな歴史的発見を含む論考、(2)冷戦についての多国間関係の展開についての論考、(3)社会、文化と冷戦の関係についての実証的論考、(4)冷戦の終焉を視野にいれた、冷戦の変容についての史的研究などです。さらに、冷戦史研究の発展に資することができるような理論研究も募集の対象といたします。冷戦史研究が転換期にある今、世界的水準を超える研究を世に問うチャンスが到来しています。海外の学界に正面からチャレンジを試みる独創的な研究をお待ちしております。特に、若手研究者の皆様の、挑発的論考をお待ちしております。
 上記の編集趣旨をご承諾の上投稿を希望される方は、論文のテーマとそのねらい趣旨を、1000字以内にまとめて、2002年11月末までに、編集担当者まで、E-mailでご送付ください。
 原稿の最終締め切りは、2003年7月15日で、原稿の長さは注を含めて400字原稿用紙50枚以内です。執筆要領は、『国際政治』125号241-5頁をご参照ください。論文掲載の可否の最終的な決定は、原稿提出後に行いますので、あらかじめご了承ください。
 編集担当者 田中孝彦 cj00008@srv.cc.hit-u.ac.jp

『国際政治』第135号原稿募集(2004年1月発行予定)
特集タイトル:「東アジア安全保障と地域協力」(仮題)
 「東アジア」が単なる地理的空間概念を越えて、国際政治的に有意義な一つの「地域」として形成されるのだろうか。冷戦終結後、主として社会・経済的な相互依存と交流の深化で、緩やかに展開されてきた東アジアの地域協力は、いまグローバル化と「9・11」がもたらした様々な挑戦に直面し、大きな転換期を迎えています。とりわけ、安全保障の面では、古い冷戦対立の残滓の上に、古典的な地政学的脅威観や新しい国境横断的な安全保障アジェンダが重層的に交錯し、さらに、各国の政治的民主化の進展がもたらした「外交の内政化」が東アジア地域の展望を一層複雑なものにしています。繰り返し取り上げられてきたテーマですが、本特集では、以上のような問題意識に基づいて、東アジアの地域安全保障を、主としてその変容の側面に焦点を合わせ、時間的かつ空間的にマクロな視点から捉えなおすことを目指したいと思います。東アジアを題材とした安全保障理論の再構築、地域機構の現状と展望、域内外諸国の地域安全保障政策、国内政治の民主化と対外政策、非国家主体(国際機構やNGO)の機能と役割、EUなど他の地域との比較、暴力・紛争と軍事化の構造など、多様な観点からの意欲的かつ斬新な論考を期待します。
 応募方法:投稿を希望される方は、論文のテーマと趣旨を1000字以内にまとめて、2003年1月末まで編集担当者(李)にお送り下さい。その際、連絡先住所、電話番号(自宅・職場)、ファックス番号、Eメールアドレスを明記して下さい。テーマと趣旨を検討した上で、執筆をお願いする方には、編集担当者からご連絡いたします。論文の最終締め切りは、2003年9月15日です。論文の長さは、注を含めて、400字詰め原稿用紙50枚以内(厳守)です。執筆要項は『国際政治』125号、241−5頁をご参照下さい。論文掲載の可否の最終的決定は、原稿提出後に行いますので、あらかじめご了承ください。
 編集担当者:李鍾元(立教大学法学部)

≪2002年度第2回国際学術交流基金助成≫

 2002年度の第2回助成を以下の通り公募いたします。
 【申請資格】40歳前後までの正会員(選考に際しては若手を優先します。また申請年度を含め、継続して2年以上会費が納入されていることが必要です)。なお、既に助成を受けた会員、40歳以上の会員の申請を妨げませんが優先度は低くなります。
 【助成対象】原則として申請期限後1年以内(第2回は03年11月まで)に海外で実施予定の学会等において行う研究発表(司会、討論者などは対象となりません)。      なお、海外在住会員が他地域(日本を除く)で行う研究発表の申請も認めます。
 【申請方法】
  @下記の事務局宛に、80円切手を貼付した返信用封筒を同封のうえ申請用紙の送付を申し出る。
  A申請用紙に必要事項を記入し、他の必要書類(プログラム写し、旅費の見積り等:詳細は申請者に通知)を添付して期日までに郵送。
 【申請期限・申請先】
  @第1回:2002年5月末日(終了)
  A第2回:2002年11月末日
 申請先:186-8601国立市中2−1一橋大学磯野研究館
    日本国際政治学会一橋大学事務局宛
 【決定通知と助成金額】申請締切から2ヶ月以内に採否を通知する予定です。1件の助成額は当該年度の予算、申請額、採用者の数などに拠りますが、概ね欧米が10〜15万円、アジアが5〜8万円程度です。
  第1回の応募者は7名、うち4名(総計25万円)に助成いたしました。
  なおご質問等は一橋事務局にお願いいたします。
 (国際学術交流基金委員会・波多野澄雄)

≪事務局だより≫

 1.4月20日午後1時から午後5時にかけて第8回運営委員会、5月18日午前11時から午後2時にかけて第9回運営委員会、5月18日午後3時から午後5時30分にかけて第4回理事会、8月1日午後5時から午後6時30分にかけて第10回運営委員会が開催されました。また、5月18日午後2時から午後3時にかけて評議員候補者選考委員会が、運営委員に北岡伸一会員、田中俊郎会員を加えて開催されました。8月1日午前10時30分から午後5時にかけて、理事および監事を選出するための選挙管理委員会が、運営委員に、石井修会員、薬師寺泰蔵会員を加えて開催されました。上記会議は、すべて東京大学東洋文化研究所で開催されました。
 2.本ニューズレター2頁の猪口理事長の訴えにもありますように、5月18日の理事会では、きわめて重要な決定がなされました。2003年度からの会費の値上げであります。これまでの年間1万円から年間1万4千円となります。事務局としても、このような大幅値上げをお願いすることは大変心苦しい次第ではありますが、理事長巻頭言にありますような諸般の事情をご勘案のうえ、ご協力いただけますようにお願い申し上げます。このニューズレターでも各委員会からお知らせしてきましたように、和文刊行費やその他の経費の例を見ない節減に努めてきましたが、長期的に現在の会費では活動が維持できず、また会員皆様の研究活動の要求に応えることもできない、というのが理事会でのご判断だったのだと思います。和文機関誌の年4号・英文機関誌年2号体制が実現することによって、会費値上げに見合う会員サービスの向上が図られるものと考えております。また、大学院生会員については、3年次以降の博士課程在籍者に限るとされてきましたが、学会事務センターに会員管理を委託して以来効果的に管理がなされることになったことに加え、修士課程在籍者の間の入会希望者も多いことから、かつての制度に戻ることにしました。
 3.第4回理事会で決定されたことは、各委員会から報告されるものを除くと、上記会費値上げを含めて以下の通りです。
  (1) 第7回運営委員会で16名、第8回運営委員会で9名、第9回運営委員会で19名の入会申込者の仮承認がなされましたが、第4回理事会で44名すべての入会が承認されました。
  (2) 2001年度決算、2002年度予算が承認されました。
  (3) 名誉理事推薦手続きにしたがって該当者を検討した結果、有賀貞、岡部達味、宮里政玄の3会員に2002年4月1日付けで名誉理事に御就任いただくよう決定し、理事長が3会員に依頼することになりました。
  (4) 評議員候補者選考会議で決定された評議員候補者リストを承認しました。
  (5) 本年度研究大会の企画案を承認しました。
  (6) 2003年度研究大会を、2003年10月17日から19日にかけて、「つくば国際会議場」を中心とする施設で開催することに決定しました。
  (7) 研究成果発表の機会増大を求める会員の増大に鑑みて、和文機関誌『国際政治』の年間刊行回数を2003年4月から、3回から4回に増やすこと、年間4冊のうち3冊は特集形式を主とし、1冊は独立論文のみからなるものとすることを決定しました。
  (8) 以下の通り、会員規則を変更することを決定しました。
   @会員規則1通常会員規程(ロ)の「大学院三年次以上の学生会員」を「大学院一年次以上の学生会員」と改正する(理事会決定と同時にただちに実施)。
   A会員規則1通常会員規程(ロ)の「年額一万円」を「年額一万四千円」と改正する(2003年度から実施)。
  (9) 学会創立50周年事業のため、準備委員会およびに運営委員会を設立することに決定しました。
 4.本年は、役員改選の年で、上記したように評議員候補者選考委員会が5月18日に行われ、657名の会員が評議員候補者されました。評議員就任を承諾した会員は637名でした。7月に郵送によって評議員を有権者として理事選挙を行い、8月1日に選挙管理委員会立ち会いのもとで開票作業を行いました。7月31日までに到着した投票数は333票でした。投票結果に基づき、選挙管理委員会で理事候補を決定し、現在、就任依頼を行っているところです。
 (文責:田中明彦)

≪編集後記≫

 やがて9.11事件から1年を迎えます。世界のあちこちに依然としてさまざまな形でその余韻が残っています。前号の藤原会員のご論稿に続き、木畑洋一会員に違った角度から問題提起をお願いしました。
 さて、本学会はひとつの節目に立っています。猪口理事長の訴えおよび事務局だよりにありますように、今期の理事会・運営委員会は、会の財政問題を中心に改善に取り組んできました。その際の基本的な哲学は、「会員に開かれた学会」でした。研究大会のあり方、学会機関誌の刊行方針など、いずれもこの理念に従って検討されてきました。じつは、ニューズレターも、会員と理事会・運営委員会あるいは会員相互のコミュニケーションの手段として、もっと開かれた編集をと構想していました。しかし、これは残念ながら実現できませんでした。力不足をお詫びいたします。
 本ニューズレター委員会が編集を担当する最後の号になりました。これまでご協力いただいた方々に感謝申し上げます。
 (主任 佐々木雄太)

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「日本国際政治学会ニューズレターNo.96」
(2002年8月20日発行)
発行人 猪口 孝
編集人 佐々木雄太 
〒464-8601 名古屋市千種区名古屋大学
大学院法学研究科 佐々木雄太研究室

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