JAIR Newsletter
No.100 Aug 2003 日本国際政治学会
今年6月下旬に日本国際政治学会の名誉理事を中心に、約50年におよぶ学会活動の歴史を回顧し、今後を展望する座談会が開かれた。理論を専門とする私には、これまでの学会活動において歴史研究の果たしてきた役割を再認識するとともに、国際関係における歴史的要因について、歴史研究、地域研究そして理論研究から取り組むことが、日本における国際関係研究の特徴をうちだす一つの方法ではないかと考えるようになった。以下、この点について若干のべたい(座談会の詳細は研究大会の際に小冊子として配布予定とのこと)。
座談会で印象的であったのは、学会として1959年から取り組んだ『太平洋戦争への道』に関する共同研究では史料を中心とする分析に徹したという話であった。戦前日本の戦争責任をめぐる議論も盛りこむべきではないかとの意見もあったという。しかし、学会が政治的問題に深くコミットするようになることを警戒し、政治過程の実証分析に焦点を絞ったとのことであった。現在では、日本国際政治学会でも、国際組織や政府組織の決定・活動に参画している会員の数は少なくない。私自身も理論を用いた分析と現場の眼を相互に関連づけることはきわめて重要であると考えている。
結果からみれば、『太平洋戦争への道』に代表されるように、政治的文脈から自由で、資料的裏づけを重視するアカデミックな研究を追求してきたからこそ、逆説的かもしれないが、現在では、アカデミックな研究者と政府の実務家などが協力関係を築ける状態が形成されたのだろう。
上記の共同研究では、帝国主義ということばも使わなかったという。この概念に縛られてものを考えるようになることを避けるためであり、この点は現在の理論研究に対する警鐘にも聞こえた。
さて、学会創設時は外交史研究が主であったという。当時は、世界的に国際関係の理論研究は未発達であり、当然ではあったが、日本国際政治学会では、その後も、歴史研究は地域研究や理論研究とともに学会の3本柱を構成している。北米を中心とする国際関係学会(International Studies Association)と比べ、この点は日本国際政治学会の特徴だろう。そして、おそらく、国際関係研究におけるJapan Schoolを形成しようと思うのであれば、こうした特徴を活かしていくこともひとつの方法ではないだろうか。
具体的な課題例として、すでに優れた著作や論文もあるが、「国際関係における歴史的要因」の問題をあげることができよう。アジア太平洋の地域研究や日本外交研究において歴史認識問題が重要であることはいうまでもない。また歴史の事実関係や事実認識については、基本的に外交史研究に負うところが大きい。さらに、歴史認識や歴史の記憶は優れて現代的な問題でもある。というのは、過去の戦争に関する記憶は、その後に経験する戦争などにより修正・再構築されることも少なくないからである。そして、ここに、国際関係における歴史的要因について理論からも研究にとりくむ必要性があるのではないかと思う。
実際に、グローバル化の進展により国家の役割が再検討され、アイデンティティの対象として国家以外の単位の可能性が議論されるようになってきた。これに伴い、ナショナル・ヒストリーを超えて、ジェンダー、マイノリティ、そして子どもなどに焦点をあてる歴史(いわばトランスナショナル・ヒストリー)の見方も提起されるようになってきた。アイデンティティや歴史認識・記憶の問題は、構成主義理論に興味をいだくものをはじめ、広く国際関係の理論研究者にとっても興味の尽きないテーマである。
もちろん、日本国際政治学会の特徴を活かせる研究テーマは他にもたくさんあるだろう。また、「ナショナル・ヒストリーを超えて」などといいながら、Japanにこだわるのも矛盾しているが、いつの日かJapan Schoolと呼ばれるものが登場することを願っている。
学会ニューズレターは、1973年に創刊号を刊行してから、今号でちょうど100号を迎えました。NL委員会および運営委員会では、これを記念して、去る6月21日、創立初期から創成期の学会活動を支えてこられた方々7名にお集まりいただき、座談会を開催いたしました。参加いただいた方々は、細谷千博先生(NL創刊時の理事長)を初め、有賀貞、宇野重昭、大畑篤四郎、大畠秀樹、小林幸男の各先生のほか、司会を池井優先生にお願いいたしました。川田侃先生は残念ながら体調のご都合でご参加はいただけませんでしたが、国際的な活動について貴重な事跡をご紹介いただきました。
座談会のねらいは、100号記念という意味のほか、創立50周年を3年後に控え、創成期の学会活動を記録として遺すともに、将来の学会運営に資するというもので、この種の企画としては初めての試みでした。座談の内容は、(1)創立(1956年)までの経緯、(2)草創期(1956年〜1967年)の活動―神川理事長の10年、(3)30周年(1986年)まで、(4)40周年幕張国際会議(1996年)、(5)学会への提言、と分けることができますが、予定時間を1時間もオーバーするほど話がはずみ、回顧談のみならず今後の学会運営や活動のあり方につき様々な提言をいただき、真に有意義なものでした。
私見ながら、とくに印象的であったのは、最近、学会活動を何にもまして大切な営みと考える研究者が少なくなっているのではないか、というご指摘でした。学問分野も学会も細分化・専門化が進み、他方で巨大化し、総合化が求められる学会活動にどのようにかかわるべきか、といった問題を原点に立ち戻って考えさせられる一言でした。
これらの内容は本号にて紹介する予定でおりましたが、内容が多岐にわたることと、量的な問題があり、10月の大会時にご入用の会員に「学会活動年表」とともに配布する計画で編集を進めております。お詫び方々、お知らせいたします。
中東分科会は2001年に発生した米国での同時多発テロ事件とその後の中東地域における緊張の高まりを反映してか、例年になく報告希望が殺到した。その結果、2002年度の研究大会では、通常の一般研究報告2件に加えて「9・11」とその後を巡る議論をパネルディスカッションの形で行うこととし、分科会も二日に分けて実施した。いずれの分科会も中東地域を専門としない会員の参加が多く、さまざまな分野からのコメント、意見が寄せられたことは、分科会の研究の幅を広げるのに大変有意義であったといえよう。
C-5での研究報告では、富田健次(大分県立芸術文化短期大学)「ホメイニーのイスラーム思想と自由主義の位置関係」が、ホメイニーの政治思想におけるリベラリズムを「物質的欲望からの解放の自由」と位置づけて西欧近代リベラリズムの「物質的欲望を満たす自由」と対置させた議論を行った。また池内恵(アジア経済研究所)「イスラーム政府三論」報告は、70-80年代にエジプトで提示されたイスラーム憲法試案を比較検討したもので、特に体制による支配の正統性の確保としてのイスラーム憲法設定の文脈が論じられた。いずれの報告も、フロアーからイスラーム思想と西欧近代の政治哲学とを比較する視角からの質問が出され、活発な議論が展開された。
「9・11」後1年の視点から、米国の「対テロ戦争」の対象としての「イスラーム過激派」および「ならず者国家」の問題を、4報告と討論で再考した。松本弘(日本国際問題研究所)「アラブ世界のイスラム過激派―その変質と9・11―」報告は、アラブのイスラーム過激派組織としてのアル=カーイダが、アメリカを攻撃対象とするに至った理由を、祖国を離れ海外に拠点を移した過激派の孤立と越境的な反米感情への依存に帰した。酒井啓子(アジア経済研究所)「イラク:国家主体の「暴力」と「反米」、その越境性」報告は、イラクのフセイン政権とアル=カーイダの共通項として、支持基盤を欠いた勢力・政権が「敵」をすり替える形で「越境」的に「反米」姿勢をとっている点を指摘した。松永泰行(日本大学)「米国の「ならず者国家」視政策(姿勢)と対象国におけるナショナリズムの問題―イランの場合」報告は、対象国のナショナリズムにおける自国の位置づけや国際関係的文脈を無視し、イランをイラクやアル=カーイダと同列視する米国の政策認識の「陥穽」を指摘した。宮田律(静岡県立大学)「「報復戦争」とイスラーム過激派―「パックス・アメリカーナ」によるイスラーム世界の変容」報告は、米国の報復戦争としての「対テロ戦争」が反米意識を増大させる危険性を、中央アジア他のケースを基に鳥瞰した。
会場を交えた討論は、企画の趣旨であった米国との関わりに関してというよりはむしろ、中東・イスラーム世界の政治的「閉塞感」や「テロ」の背景に質疑が集中した。
杉浦功一会員(大阪国際大学)が、「国連の民主化支援活動とその暫定的評価―「民主化の課題」のその後―」と題する報告を行った。ブトロス・ガリ国連事務総長は、退任直前の1996年12月に「民主化への課題」を総会に提出した。この報告書自体はあまり注目されることなく終わったが、国連の民主化支援活動は、その後、独自の特徴を持ちつつ着実に発達している。本報告では、これまで十分に考察されてきたとは言い難い国連の活動におけるデモクラシー及び民主化の位置づけや、国連による民主化支援活動の特徴が、歴史的展開と実際の活動実績を踏まえて検討された。報告では、国連として「手続き的な最小限のデモクラシー」をする民主化支援に向けた合意は形成されつつあるものの支援体制は未整備であること、権威主義的な加盟国や民主的政府の非合法的な転覆に対する明確な手続きが存在しないこと、PKOに伴う選挙支援に加え、民主化の定着に向けた政治、社会、文化的な環境構築の段階での国連のさらなる貢献が必要であること、などが指摘された。
司会者兼討論者の星野俊也会員(大阪大学)およびフロアの秋月、アレキサンダー、上田、清水、中沢、望月、ロックハイマー、渡部の各会員からは、多様なデモクラシーおよび民主化のあり方があってもよく、それについてどう考えるか、支援方法に関して強制的な方法から単なる奨励までいくつかの段階に分類してはどうか、市民社会による下からの民主化努力(「内発的民主化」といった視点)をどう組み込んでいくか、また、国連自体の「民主化」の問題と加盟国への民主化支援はどう連関しているのか、といった質問がなされ、活発な議論が行われた。
2003年6月20日、国際連合大学高等研究所において研究会を開催し、勝間靖会員(国連児童基金)が、「ジェンダー平等へ向けた女子教育をめぐる政府、国際機関、NGOの連携〜ユニセフの動向を事例として」と題する報告を行った。
2000年の「万人のための教育ダカール行動枠組」や「ミレニアム開発目標(MDGs)」へ至る国際的潮流において、政府および国際機関の基礎教育へのコミットメントは強い。また、国際市民社会では、1999年にNGOと教員組合が「教育グローバル・キャンペーン」を立ち上げた。それと並び、ジェンダー差別の撤廃へ向けて、国連女子教育イニシアティブ(UNGEI)が2000年に提唱され、女子教育拡充のパートナーシップ強化が進められている。本報告で勝間会員は、UNGEIにおける政府、国際機関、NGO等の国際的行為主体の動きに着目し、国際開発目標としての女子教育が地球的課題として再浮上したプロセスの分析を試みた。組織行動研究において、組織のおかれた環境(マクロ)、組織相互間(中間)、組織内部における意思決定(ミクロ)の三つの分析レベルを区別できる。マクロでは、国連加盟国によるMDGsの採択や、開発における人権とジェンダーの主流化など、国連システムおよびNGOネットワークは女子教育を優先課題とした。中間レベルでは、ユニセフ、ユネスコ、世界銀行などがUNGEIの中で提携を進めてきた。最後に、ミクロでは、例えばユニセフの場合、執行理事会による中期戦略計画の設定、子どもの権利条約に規定されるマンデート、開発におけるエントリー・ポイントとして女子教育を捉える思考の浸透によって、組織内部で女子教育が主流化された。
以上の報告に関し、報告者と雨野統、内田孟男、久保田有香、志村尚子、庄司真理子、南部利尚、野瀬久美子、則武輝幸、山元めぐみ、横田匡紀の各会員との間で活発な意見が交わされ、密度の高い有意義な研究会となった。
日本外交史分科会は平成15年度上半期に以下の研究報告会を実施いたしました。研究報告は逐次、受け付けておりますので奮ってお申し出ください。(分科会責任者:黒沢文貴・東京女子大学現代文化学部)
日時 5月17日(土) 於・東京女子大学
報告者 井口武夫会員
課題 「太平洋戦争開戦時の対米通告と対英無通告に関する考察」
討論者 秦郁彦会員、岩島久夫会員、塩崎弘明会員
司会者 大畑篤四郎会員
井口会員の報告の概要は以下の通りである。対米通告発電の際、第14部を15時間も遅らせた理由が解明されず、夜間の米国到着緊急電は"very urgent"と表示する手筈が無視され、「大至急」表示がなかった。対米通告発電中にローズベルトの天皇宛親電が受信された12月7日午後4時頃、参謀本部通信課の戸村少佐が15時間だけ東京電報局に配達を遅らせるよう命じたのは、コタバルへ航行中の山下兵団が英軍偵察機を撃墜したため、開戦が早まりそうだったので親電を10時間以上遅らせたとのことだが、親電と対米通告電の差し押さえ時間が符号すること、通告の脱落電文の補足電報も同様に15時間遅れて発電されたことは意図的で、対米通告の遅延工作は、コタバル作戦の無通告攻撃を企図した陸軍の謀議と関連があると論じた。これに対して、討論者の秦郁彦会員は、状況証拠の裏付けの必要性、同じく討論者の岩島久夫会員は遺稿に頼る危険性、同じく塩崎弘明会員は、外務省枢軸派の外交史観の偏向性を指摘した。三輪公忠会員その他から通説が覆される等の有益な発言があった。多数の参加を得て盛況であった。
日時 7月5日(土) 於・東京女子大学
報告者 大賀哲会員(エセックス大学政治学部博士課程博士候補生)
課題 「日本外交史の思想史的考察:理論と方法」
討論者 酒井哲哉会員(東京大学) 野崎孝弘会員(横浜国立大学非常勤講師)
司会者 波多野澄雄会員(筑波大学)
筑波大学特別研究学生として来日中の大賀会員は、外交をナショナル・アイデンティティの構築作業と捉え、明治以降のナショナル・アイデンティティがどのように外交言説によって構築されてきたかを検証した。具体的には日本外交史を特定の事件等に焦点を当てた事例研究としてではなく、個々の外交思想・外交言説に着目した思想史としての観点からの再検討を試みた。各時代に外交思想史の大まかなパターンを俯瞰するために言説分析を採用し、外交思想の傾向を「脱亜入欧」といった思想に代表される「欧米主義」、そのアンチテーゼとしての「アジア主義」、さらに両者に対する折衷案として浮上した「国際主義」の三類型に分類した。また個々の(外交指導者またはオピニオン・リーダーの)外交言説がどの思想タイプに分類されるかを俯瞰し、各時期にどのような外交思想・外交言説が構築されてきたのかを考察した。
これに対して討論者の酒井会員は、外交思想研究の新たなアプローチを評価しつつも、外交言説分析という方法論の特色が生かされていない点等を指摘し、同じく野崎会員が理論的側面についてコメントと質問を行った。フロアから「欧米主義」「アジア主義」「国際主義」の用法、ことに「国際主義」の位置付けと内容理解、それぞれを代表する人物の人選の是非等について井口武夫会員、篠原初枝会員、樋口敏弘会員、影山好一郎会員よりコメントと質問がなされ、等松春夫会員は1930年代の日独接近をどう位置づけるかについて問題を提起した。参加者は50名にのぼり、関心の高さをうかがわせた。
すでに何回もご案内していますように、今年度から毎年、独立論文のみからなる「独立論文号」(仮称)が1号発行されることになり、第1号が『国際政治』136として明年2月刊行の予定です。掲載論文の本数が大幅に増えますので、どしどし応募して下さい。現在、院生会員や若手一般会員からの投稿が多数を占めていますが、中堅以上の会員も是非奮ってご投稿下さるようお願い申し上げます。執筆要領については『国際政治』131号をご参照下さい。
機関誌に掲載される論文や書評がどのようにして決まるのかに関する質問が多く寄せられていますので、この機会にまとめてご説明いたします。
『国際政治』に掲載される論文のうち特集論文は、基本的にその特集の編集責任者が決めています。原則としてNLを通じての公募に対する応募論文の中から選ばれますが、場合によっては編集責任者からの依頼に応じた寄稿論文の中からも選ばれます。掲載の基準はいうまでもなくその特集に相応しい学術論文の水準に達しているかどうかですが、具体的な取捨選択は編集責任者に一任されています。
各特集号には特集と関係ない独立論文も掲載されており、また今年度からは独立論文のみから構成される「独立論文号」(仮称)も発行されます。そこで投稿論文数の増大を想定して、審査手続きについては従来の方針に基本的に従っていますが、何点か明確にした改正点について運営委員会の承認を得ました。現在の独立論文の審査手続きは次の通りです。(1)投稿された論文に対し、独立論文審査委員会(独立論文担当副主任を委員長とし、書評担当副主任と主任とを委員とする3名で現在は運営)でレフェリー2名を選定する。なお、レフェリー選定に際しては、投稿論文の内容に詳しいと同時に、師弟関係や職場での緊密な関係にない会員に依頼するようにしています。また、審査に際しては、レフェリーについても投稿者についても匿名を厳守しています。(2)レフェリー2名の判定を総合的に評価して、(A)掲載(B)修正意見に十分に応えた改訂論文を再提出したら掲載(C)修正意見に対してどのように応えたかレフェリーが再審査する (D)不掲載、のいずれかを独立論文審査委員会が決める。(3)審査結果を投稿者に通知するが、(B)(C)については改訂論文の再投稿を待ち、再投稿論文について各々適切な手続きをとる。なお、再投稿は1度のみ認めます。つまり、再投稿論文の審査結果は、(A)か(D)になります。掲載が決まった論文については、その判断を下した時点での原稿が最終的な完成原稿と見なされ、その後の加筆・補筆は一切認められません。
書評は、対象著作の選定も評者の選定も、全て書評委員会(構成は『国際政治』各号巻末に掲載)でおこなっています。書評は全て書評委員会からの依頼によるもので、書評の投稿は受け付けておりません。なお、書評に取り上げてもらいたい学術書があれば、書評委員の会員にご提案下さい。
*既に募集は終了しておりますが、ご参考まで掲載致します。
『国際政治』138号(2004年8月刊行予定)は「中央アジア(カフカス)をめぐる国際関係の諸問題」を特集テーマとすることになりました。特集論文を公募しますので、奮ってご応募ください。
ソ連邦から中央アジア(カフカス)の諸国が独立して12年になりますが、それらの国が独立国家として存続する能力があるか否か、国際社会の安定したメンバーになれるか否かはまだ未知数です。民主主義や市場経済がこれらの国にとって何を意味するのか、それらの理念や制度がどのように定着するのかも不明です。ソ連邦崩壊後、この地域の宗教や文化、社会心理がどれだけ変わっているのか、あるいは変わっていないのかということも、必ずしも正確には理解されていません。9・11事件後の、またイラク戦争後の国際情勢の大きな変化は、これらの国々の米国、ロシア、中国などに対する関係に、あるいはNATO、CIS集団安保、上海協力機構などに対する関係に、抜本的な影響を及ぼしました。いくつかの国では、米軍(NATO軍)とロシア軍が同居するという状況さえ生まれています。これらの国々とアフガニスタン、イラク、イランなどとの関係も、世界に微妙な影響を及ぼしています。また、この地域のエネルギーや資源をめぐる各国の国際戦略も世界の関心の的となっています。中央アジア(カフカス)が今後どのような変化を遂げるかは、世界の政治情勢、経済関係、戦略地図を大きく動かすファクターでもあります。しかしその変化の真実の姿は、必ずしも充分には知られていません。日本人としても、この地域にもっと大きな関心を向け、この地域の認識をいっそう深める必要があります。
以上の観点から、中央アジア(カフカス)諸国の情勢やこの地域をめぐる国際関係についての意欲的な論文を募集します。奮ってご投稿いただきたいと存じます。
全体の構成などを考慮して、改めて当方より投稿をお願いします。原稿の最終締切は、2004年4月末です。なお、特集論文として掲載するかどうかは最終原稿を踏まえて判断しますので、予めご承知おきください。
英文誌(International Relations of the Asia-Pacific, IRAP)は2000年に発刊され、既に3年目も終わろうとしています。お蔭様で内外でも好評です。オックスフォード大学出版社は独自に匿名のreviewを作成し、その報告を私に送ったのが2003年の春です。このreviewに対するreplyを現在作成中です。
その骨子はアジア太平洋地域の国際関係として独自の高い地歩を国際的にも固めつつあり、更なる発展を強く期待しているというものである。とりわけ、
正式のreplyはこのラインで英文誌編集委員会で承認を得て、今秋早々に行ないたいと思います。会員皆様の更なる御理解・御支援を頂ければ幸いです。
*既に本年度分申請は終了しておりますが、ご参考まで掲載いたします。
【申請資格】
40歳前後までの正会員(選考に際しては若手を優先します。また申請年度を含め、継続して2年以上会費が納入されていることが必要です)。なお、既に助成を受けた会員、40歳以上の会員の申請を妨げませんが優先度は低くなります。
【助成対象】
原則として申請期限後1年以内(第1回は04年5月まで)に海外で実施予定の学会等において行う研究発表(司会、討論者などは対象となりません)。海外在住会員が他地域(日本を除く)で行う研究発表の申請も認めます。
なお、選考の最終段階で申請年度の会費納入が確認できない場合は、選考対象外とします。
【申請方法】
【申請期限】
第1回:2003年5月末日(終了)
第2回:2003年11月末日(終了)
【申請先】
186-8601国立市中2-1 一橋大学磯野研究館
日本国際政治学会一橋大学事務局宛
【決定通知と助成金額】
申請締切から2ヶ月以内に採否を通知する予定です。1件の助成額は当該年度の予算、申請額、採用者の数などに拠りますが、概ね欧米が8-12万円、アジアが4-6万円程度です。なおご質問等は一橋事務局にお願いいたします。
○第3回運営委員会が2003年5月17日(土)午後1時−3時半に、法政大学現代法研究所会議室で開催されました。33名の入会申込者の仮承認がなされたほか、3名の名誉理事就任の推薦、2002年度決算および2003年度予算案、2001年度の外務省の立入検査の際の指摘に基づく役員・評議員選出に関する申し合わせ等の改正案、2003年度研究大会プログラム案などの審議が行われました。
○それに引き続き、第2回理事会が2003年5月17日(土)午後3時45分−6時に、法政大学現代法研究所会議室で開催されました。審議事項は以下のとおりです。
○第4回運営委員会が2003年7月5日(土)午後12時半−3時半に、法政大学現代法研究所会議室で開催されました。報告・審議事項のうち、各委員会からのお知らせを除き、主なものは以下のとおりです。
今年度より実施されました学会年会費値上がりについて、私のようにすでに定年退職となり、大学の研究費や旅費がなくなった会員は少なくないと思います。現役の会員にはさほど感じないかもしれませんが、収入がほとんど年金のみになりますと、生活もいささか切り詰めざるを得なくなり、すでに他の学会や研究会など幾つかは退会しました。しかし、本学会にはなお会員であり続けたいと思いますが、一気に1万4000円への年会費値上げはやはり驚きです。
そこで提案ですが、同学会創立以来会員であり続けてきた者は、名誉会員また特別会員の称号を与えて、会費を半額にするなどの考慮を加えてはいかがでしょうか。同様に、修学中の院生会員にも何らかの特別措置を与えてはどうでしょうか。よろしく、ご検討方お願い申し上げます。
今年の年次大会は10月につくば市で開催される。学問的刺激に満ちた研究報告を今から楽しみにしているが、このような大会が1年に一度しかないのは残念なことであるし、若干の問題点もあるように思われる。たとえば、3日間に集中して行なうことで、興味のある部会・分科会のスケジュールが重なってしてしまうことが少なくない。このことは、特に自分のような若手の会員にとって、研究関心の領域を広げるチャンスをみすみす見逃しているようで、非常に残念なことである。
こうした問題を解決するため、すでにいくつかの分科会が実行しているような、年次大会とは別の研究報告会をこまめに開催することを提案したい。その際、学会ホームページやニューズレターを通じて幅広く告知することで、関心のある会員が気軽に参加できるようにすべきである。また、たとえば、いくつかの分科会を横断した研究報告会を共通テーマの下で行なうことも、学際的な研究関心を深める上で役立つのではないだろうか。
「日本国際政治学会ニューズレター No.100」 (2003年8月20日発行) |
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発行人 | 下斗米伸夫 |
編集人 | 波多野澄雄 |
〒305-8572 つくば市天王台1-1-1
筑波大学人文社会科学研究科 |